良質な日本のハードボイルド 原尞(はらりょう)の『私が殺した少女』を読み終わりました。年末から様々なミステリーを読んできましたが、これはおもしろい。宮部みゆきの『火車』、東野圭吾の『沈黙のパレード』とは少し違ったおもしろさです。 ストーリーもさることながら、主人公沢崎のちょうどよい言い回しが痛快。少し前に読んだ『64』とは対照的ですね。それを魅力と思えば高評価です。もちろんわたしも惹かれましたよ。 アマゾンのレビューを読むと、評価は真っ二つに別れます。沢崎の言い回しを「無意味な表現」とする読者が結構多いんです。「端的に表せ」ということでしょう。わたしなんか、ある意味ストーリー以上に言い回しや表現を探しながら読む癖がついているので、苦になりませんでした。 この沢崎、言い回しが独特で、癖があります。例えばこんな感じ。 〈名前のない喫茶店〉というのが、その喫茶店の名前だった。その種の気取りがいか