夫が告知を受けた一昨年、知人の紹介でまだ二十代のがん治療中の女性と知り合った。彼女が去年の暮れに亡くなったと聞いて夫と二人でご家族に会いにいった。三十代になったばかりだった。 告知直後、何か役に立つ情報はないかと片っ端からがんブログの梯子をしていた頃、何よりショックだったのは最新ブログに「家族のものです。この度」ではじまる知らせが綴られていることだった。がんブログを梯子するとこうした最終エントリーが続く。バタバタ人が死んでいく。がんだから死ぬのだ、そしてそのがんが我が家へやってきたのだという気持ちになる。 人はいつか死ぬ。けれども普段わたしたちはそれはまだ先のこと、髪がすっかり白くなり、皺だらけの顔を鏡で見る頃だと思っている。平均値の出し方は知っていても、平均寿命とは大半の人がその年齢まで生きるという意味だと思っている。時ならぬ死は大きな衝撃をもたらすが、実際には「時ならぬ」わけではなく、