時系列信号の推定・予測手法の基本中の基本であるカルマンフィルタを,直観的理解を見失わない範囲でなるべく簡潔に導出してみる試み.まあ実際に書き上げてみた結果「簡潔って何だっけ」という気持ちになってる. 直観的であることと簡潔であることはなかなか両立が難しい.実際,単に証明の字面を短くしたいならもっと別のアプローチ (例えば直交射影原理) の方がよいだろうし,今回のアプローチでもさらに冗長性を排除することはできる.しかし簡潔過ぎると初学者にはきつい (私にもきつい).少々長くなるのは許容して,導出になっているのと同時に解説にもなるようなものを目指した. 一方で,長すぎるとそれはそれで心が折れるので,細かい話や念のための補足説明は,注釈としてグレーのボックスに分けて書くことにした. この手の文章を書くときに,前提知識をどう設定するべきかはとても難しい.今回は,線形代数は完全に既習として,確率論に