宇多田ヒカルが歌うものとはいったい何だろうか? 彼女にとって8年ぶりのオリジナルアルバム『Fantôme』のリリースは、チャート1位の歓待を持って受け入れられ、あらためて存在感を放ったのも記憶に新しい。 『Fantôme』を含む彼女の作品を文芸評論家の目で評した『宇多田ヒカル論 世界の無限と交わる歌』(毎日新聞出版)の著者・杉田俊介氏(批評家)と、音楽業界の構造的変革を論じた話題書『ヒットの崩壊』の著者・柴那典氏(音楽ジャーナリスト)の対談が実現。 異なる立場から宇多田ヒカルの新解釈と未来図を探ります。 宇多田ヒカルは、谷川俊太郎や中原中也の系譜にいる 柴 『宇多田ヒカル論』を読ませていただきました。「はじめに」で「この本は、宇多田ヒカルの歌についての批評である」と書かれていますね。「『歌=詩』そのものにこだわり、彼女の言葉のあり方に、批評的に迫ってみる」とも。 杉田 僕は文芸批評畑の人間