馴染みの轍から抜け出そう。第二言語習得の予想外のぎこちなさと、その先にある自由 「物語を探しに」第8回 轍 「物語を探しに」第7回「新年の抱負と、その先に待つ失敗」はこちら 身体に染みこんだ習慣の罠にはまって 新宿駅を歩き回っていた。その日、調布市にある学校に招かれて講義を行い、終わると中央線に乗って帰途についたが、せっかくだから新宿に立ち寄って買い物しようとふと思いつき、電車を降りて街に出た。夕暮れの頃に紙袋をぶら下げながら再び駅に入り、大勢の利用客とともに構内の奥へと流されていった。 駅を歩きながら、何か別のことを考えていた。具体的に何だったのか憶えておらず、おそらく大したことではなかっただろうが、とにかく辺りにはあまり注意を払っていなかったことは確かだ。何度も通ったことのある、見慣れた場所にいる時に発動するオートパイロットが稼働中で、思いがどこか遠いところで自由に巡っている間、この通