小さいころ、魔女の宅急便を見る時はキキとジジが話せなくなる前の所でビデオを止めていた。相棒と急に話せなくなるのが辛すぎて見ていられなかった。万物は流転するという真理を受け入れられなかった。私は変化が嫌いな子供だった。 「抱擁、あるいはライスに塩を」は上下巻からなる(文庫版)江國香織の小説で、大きなお屋敷に住む柳島家をめぐるサーガだ。 上巻で柳島家がどんなお家なのかが分かる。普通とは違うけど面白い一族だ。お金があって、教養があって、愛がある。家族全員がお家のルールを守っている。奇妙だけど高貴だ。上巻の柳島家はみんな元気で、夏のように栄えている。ずっとこれが続いて欲しい。お父様はシャキッとしていて、菊乃や百合は若いまま、子供たちは子供のまま。 ところが栄華は永遠には続かない。下巻になると柳島一族にも秋が来る。お家にいる人数がだんだん減り、一族に影がさす。 この本を買った大学生のころ、私は変化が