新型コロナウイルスの感染拡大は多国籍企業のサプライチェーンを前代未聞の危機に晒している。一般的に企業はサプライチェーンを構築するとき、リスクヘッジを考慮に入れるが、顕在化しやすいリスクでなければ、コスト削減と利益の最大化を優先に考えがちである。1990年代初頭、冷戦終結後、日本企業を取り巻く経営環境が大きく変化した。一つはバブル崩壊による内需不振である。もう一つは超円高の進展である。同じ時期に、隣の中国では、市場開放が進み、中国政府は日本企業の直接投資を積極的に誘致していた。日本企業は安定した経営とさらなる発展を目指すために、「研究・開発」の拠点を日本に置きながら、生産拠点の大半を順次東南アジア、そして、中国へ移転していった。1990年代半ば、日本が抱える一番の課題は日本国内の産業空洞化をいかに食い止められるかだった。 日本企業の対中直接投資が大きな一歩を踏み出したのは2000年代に入って