油症は1968年に西日本一帯の広範囲な住民の方々が、熱媒体として使用されていたPCBの混入した食用米ぬか油を摂取することによって起こった食中毒事件です。その後、研究班によってPCDFなどのダイオキシン類も混入していたことがつきとめられ、油症PCB類とダイオキシン類による複合中毒であったことが証明されました。油症の初期には、全身倦怠感、食欲不振、頭重感などの非特異的な全身症状があらわれ、引き続いて、油症に特徴的な症状や所見として、座瘡様皮疹、爪の着色、眼脂過多、歯肉部の色素沈着、下肢の知覚過敏あるいは鈍麻、月経不順、乳幼児の成長遅延などがあらわれました。 発生以来時間の経過とともに、油症の臨床所見は徐々に軽くなっていますが、今後も慎重な経過観察が必要です。それはPCB類やダイオキシン類は体内に年余にわたって残留するという性質を持っているからです。本書は油症研究班によってなされたこれまでの研究