公的年金保険料の悪質滞納者に対する強制徴収を日本年金機構が国税庁に委任できる制度が、2010年1月に導入されたにもかかわらず、2年間で1件も実施されていないことがわかった。 同機構を所管する厚生労働省は「『国税』の名前を出せば納めるケースが多い」と説明するが、肝心の保険料納付率の低下に歯止めはかかっていない。省庁間対立が背景にあるとの見方もあり、税と保険料を一体徴収する「歳入庁」構想にも影響を与えそうだ。 自営業者などの国民年金保険料の納付率は1997年度から急落し、2010年度には60%を割った。11年度も10月末で56・0%と低下傾向が続く。サラリーマンが加入する厚生年金の保険料の滞納事業所も、10年度は約16万2400と過去最多を記録し、年金制度の維持が危ぶまれている。 政府は10年に社会保険庁を解体して日本年金機構を発足させた際、悪質滞納者対策として強制徴収のノウハウを持つ国