定年で現役を退く年代になると田舎暮らしに憧れる人が多い。東京や大阪などの大都会には大勢の人がいるから、そこから脱出して田舎に住みたいと思う人がいても不思議はない。その理由の一つに「田舎は物価が安く、生活費が安上がり」というのがある。とんでもない間違いだ。 私事で恐縮だが、田舎へ引っ込んだらさぞかしたっぷり貯金ができるだろうと十数年前、東京の住まいを引き払って故郷に戻った。都心から電車で約2時間の小さな町。シャッター通りと化した商店街はあるが、一歩町の外へ出れば畑や田んぼが広がる。 私と同様、数年前に東京からUターンした同級生のIが苦笑しながら言った。 「安いのは家賃ぐらいだっぺな。東京と同じ生活をしようと思ったら東京以上にかかるよ。物価は全然変わんないね。電化製品とか日用品なんかは、東京に比べたらこっちの方が高いぐらいだよ。秋葉原の家電街とか、ディスカウントの多慶屋(たけや=東京・御徒町の