「なぜ君は、そこにレールがあるのに、こんなドブ板営業をやっているんだ?」 営業訪問先の社長は、彼の経歴を知ると、ほとんど必ずと言っていいほど、この疑問を口にする。 そんな彼の名は、永守知博。34歳。 明治大学大学院卒業後、富士通でエンジニアとして勤務。退社後に米マサチューセッツ州にあるサフォーク大学でMBA(経営学修士)を取得した。帰国後は日本電産グループで働き、2009年4月に起業した。 名前と経歴でピンと来る方は多いだろう。そう、永守は、ハードディスク駆動装置用精密小型モーターで世界8割のシェアを誇る日本電産を一代で築きあげた永守重信の息子である。 “遅れ咲き”のナナロク世代 かつて父は、日本電産の創業時に、会社の経営3原則の1つとして「非同族会社」を目指すことを掲げた。この長引く不況のさなか、息子はそれをまっとうするかのように起業。現在、3人の社員とともに、自ら“足で稼ぐ”営業で全国