真夜中の予行演習 閉館後、夜間に特別に見学者を受け入れる博物館や美術館、水族館などのナイトツアーが話題を呼んでいるという。昼間のにぎわいとは別世界の、静まり返った幻想的な雰囲気が人気なのだそうだ。 そういう意味では、終電が出た後の駅もなかなか捨てたものではない、と思う。 その晩、ヤンゴン中央駅に着いた時にはもう21時を回っていた。人の気配が途絶え、灯りに照らされて闇にぼうっと浮かび上がるクリーム色の外壁は幻想的で、どこかロマンチックですらあった。 ぱたぱた・・・と、自分の足音が静まり返った構内にやけに響き渡るのを聞きながら階段を上り、3番線のプラットホームに渡る。 雨期入りを目前に控えた5月半ばの重苦しい空気が肌にまとわりつくのを感じながら、線路に降りて黙々と歩いていると、前方から、カーン、カーンという金属音や低いモーター音が聞こえてきた。 ゆらゆらと帯状の光が揺れている。近付いてみると、