「パンがないのだったら、ケーキを食べればいいのに。」と、 マリー・アントワネットは言ったのだそうだ。 どうせ、そういう話はよくできたウソなのだろうが、 ケーキがパンのかわりになると思っているマリーの気持ちが、 もひとつよくわからない。 ぼくは、ケーキを食べて腹をふくらませることなんて、したくない。 マリーはどうかしている。 しかし、とんでもなくお菓子が好きな人間というのは、 ほんとうにいる。ぼくは、そういう人を、ひとり知っている。 しかも、マリーという名である。日本人だ。 彼女は言った。 「わたしは、パンも食べるし、ケーキも食べる」 なんのこっちゃ? そのマリーは、お菓子のことを語るときと、 お菓子を食べているときだけ ほんとうに真剣な表情をみせる。怖い。 悪いひとじゃないのだろうが、怖いのはほんとうだ。 そんなマリーが、 「いま、ぜったいにたべるべきお菓子はこれだ!」と ほんとうに真剣に