人が本当に死ぬのは、その人のことが話題にすら上がらなくなることなのだとぼくは思う。彼が死んだという知らせを聞いたのは、ぼくが大学4年生の頃だったと思う。 ある日珍しく母から電話が入って、こうぼくに告げた。 「ゼンくん、亡くなったってほんと?」 久々に聞いた名前に、懐かしさを覚えると同時に、えも言われぬ後悔の念が押し寄せてきた。 ゼンは、変わりものだった。ゼンとの最初の記憶は、「うちでゲームやろうぜ」と声をかけられたことだ。ぼくが小学2年の夏休み、団地に引っ越してまもなくだ。ゼンは驚くほどのっぽの細身で、まるでウマみたいだとぼくは思った。 ゲーム?スーファミ?とぼくがたずねると、ゼンはマッキントッシュって知らないのか?とニヤリと笑ってぼくをみた。時は1995年、世間はWindows95が発売間近と盛り上がっていた。 ゼンの家のリビングの片隅には、どこかおしゃれな雰囲気を漂わせる白いコンピュー