国内のオランダ語圏とフランス語圏の対立がもたらしたベルギーの「政府不在」期間が、世界最長の8カ月になった。暫定政権が続く異常事態だが、それでも国が存続し、国民が普通に生活できているのはなぜか。 理由はベルギーの特殊な政治体制にある。この国は権限の多くが地方に移譲されており、連邦政府のほかに言語や文化に関する権限を持つ「共同体」、経済をつかさどる「地域」という自治機関がそれぞれ3つずつ存在する。 外交や防衛は、EUとNATOという国際機関に「外注」が可能(おまけにそれぞれの本部が首都ブリュッセルにある)。つまり、正式な決定権を持つ連邦政府がなくても、最低限のことはそれ以外の機関で対応できるのだ。 ただ、この国が抱える公的債務残高だけはどうにもならない。その額は対GDP比100%に迫り、こればかりは強い指導力を発揮して歳出削減に踏み切れる連邦政府の存在が欠かせない。 国家分裂までささやかれるが