対面のおじさんが必死に七味を振り掛けている。 おじさん、ここの七味は香り重視だ。たれの味を損なわない吉野家のこだわりだ。 そんなに辛いのが好きか、おじさん。 俺はU字カウンターの向こう側に回り、おじさんに瓶を差し出す。 愛用のマイ一味(業務用大瓶)だ。 おじさんは驚いた表情で俺の顔を見つめ、その後目をそらし言った。 「ありがとう」 無言で微笑み返す俺。 自席に戻った俺は食事を再開する。 お会計の時に店員に言う。 「今日のたまねぎの煮込み具合は実に俺好みだった」 あわててマイ一味(業務用大瓶)を返そうとするおじさん。 いいんだ、おじさん。それはあんたにあげたんだ。 ユア一味(業務用大瓶)だ。 ポケットから未開封のマイ一味(業務用大瓶)をおじさんに見せた。