ヨーロッパ・イン・オータム (竹書房文庫) 作者:デイヴ・ハッチンソン竹書房Amazonこの『ヨーロッパ・イン・オータム』は本邦初紹介のイギリス作家デイヴ・ハッチンソンによるSFスパイ長篇となる。本作は西安風邪の蔓延によってEUが崩壊し、みながみな好き勝手に小国を設立するようになったカオスなヨーロッパを舞台にしたその先見性のある内容と巧みな筆致も相まって(刊行は2014年)著者の出世作となり、〈分裂ヨーロッパ〉シリーズとしてその後も続篇・スピンオフが続いている作品である。 EUが崩壊し小国が乱立するようになったヨーロッパを舞台にしたスパイ小説、それもジョン・ル・カレ✗クリストファー・プリーストと評される──などと聞けばそれは期待も高まるが、読んでみればたしかにこれはおもしろいしプリースト感もある! 読み始めたばかりの頃は、運が悪く能力も微妙な新米スパイが、それこそル・カレなどを引き合いにだ