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ブックマーク / lleedd.com (28)

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 面白くなることだけは間違いない

    報告が遅くなりましたが、4月1日から東京大学生産技術研究所の教授となりました。 ことの始まりは、昨年の秋にある人が訪ねて来て「東京大学にデザインをもたらして欲しい」と依頼されたことでした。今の日にはデザインの力がとても重要なのは明らかなのに、東京大学にはその確固たる拠点がないと。 2008年に私は、慶應義塾大学の若手の研究者達に呼ばれて、SFC(湘南藤沢キャンパス)の教授に着任しました。そして、「人と人工物の間に起こること全て」を、工学も芸術も社会学も総動員してデザインする研究グループ、X-DESIGNを彼らと共に立ち上げました。幸いなことに就任してすぐ、たくさんの学生達が私の元に集まってくれ、彼らと共に義足アスリート達に出会い、「骨」展を主催し、少しずつ実験的なものを作り始めました。それから5年、素晴らしい仲間と学生を得て、ある程度の成果を発信できるようになったと実感しています。 まさ

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » ゆりかごと核エネルギー

    星空をながめながら、この輝きはほとんどが核融合なんだよなと思うと、不思議な気がします。星の力である核融合と、原発の核分裂は違う現象ではありますが、あらゆる原子が普遍的に内包している核エネルギーを利用している点では同じです。これからの原発を考えるために、少しの時間、宇宙に目をやってみたいと思います。 地球は人類のゆりかごである、しかし人は永遠にゆりかごで生きることはできない 「宇宙開発の父」ツィオルコフスキーは、ちょうど百年前の1911年に友人への手紙の中でこう書いたそうです。彼は、人類が「ゆりかご」で暮らせなくなってしまう可能性についても想像したでしょうか。 地球の最初の生命が約40億年前にあらわれたときから、太陽は安定した核融合炉として地球にエネルギーを供給し続けています。太陽からは放射線もやってきますが、地球の磁気と大気が遮ってくれるので、地上には暖かい光だけが降り注ぎます。地球にも少

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 手を描いてみましょう

    先日twitterでこんなことをつぶやきました。 手をうまく描くコツは、丸い板に五の指が生えている物として描くのではなく、手首から5方向に分かれている長い指があって、最初の関節までは肉が間を埋めているものとして描く事だ。(Feb 10, 1:00am) これに対し、「ほんとだ。生まれて初めて手が描けた気がする」というコメント付きで、米国在住の木田泰夫( @kidayasuo )さんが描いて、公開してくれたのが上のスケッチです。右の絵は「丸い板に五の指」として描かれていますが、左は「手首から5方向に分かれている長い指の間を埋める」ように描かれています。左の絵の方がずっと手らしく見えますね。 木田さんは、「ことえり」をはじめとするアップルの日語環境の開発責任者であリ、アップルを代表する技術者の一人です。おそらく絵を描くことに慣れてはいらっしゃらないと思うのですが、即興で、実に飲み込みの良

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 佐藤卓さんの「おいしい牛乳」

    「『おいしい牛乳』のパッケージは完璧なデザインである。清潔感と俗っぽさのバランスといい、売り場での存在感といい、これほど完璧なデザインは滅多にないと心から思う。しかし私にとっては最低のデザインでもある。なぜなら、私はここから何のインスピレーションも得ることができないのだ。」 この「おいしい牛乳」のパッケージ・デザイン評を私は、公開のトークショーの場で、佐藤卓さんに直接言ってしまいました。尊敬を込めての発言なのですが、発言してから「最低」はいい過ぎだったかもとちょっと後悔しました。しかし、卓さんは大笑いしながら答えてくれました。 「いやいや最高の褒め言葉じゃないですか、うれしいですねぇ。」 もちろん褒め言葉でした。店頭に並んだ時のリズム、明解な色調、ネーミングの新鮮さとロゴの堂々とした感じ。清潔感と端正さがありながら、適度に大衆的。そのうえ、商品パッケージとして必要な情報を全部詰め込んで、な

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » あらためてSuicaの話でもしようか その2

    前回に続いて、SUICA改札機の裏話的開発ストーリーです。 実験は田町の臨時改札口で行うことになりました。二日間の実験でしたが、準備には2ヶ月以上を費やしました。実験なんだから、うまくいかなければやり直せば良いと思うかもしれませんが、実際には、ある程度以上の規模の実験はコストも手間もかかるので、ワンチャンスになることも少なくありません。そう思って、周到に準備することは重要です。 被験者となってくれる人たちに、何時間もつき合わせることはできないので、ひとりづつ約束をとりつけ時間と人数を調整する必要もあるし、記録装置のセッティング、分単位のタイムテーブル、人員の配置とその人たちに配布するマニュアル、その場で実験内容を変更できる実験機の設計と準備など、意外に複雑で大きなイベントになります。 実験では驚くような光景がたくさん見られました。今では考えられないことですが、カードを縦に当てる人、アンテナ

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » あらためてSuicaの話でもしようか その1

    Suicaの開発プロセスについて触れておきたいと思います。すでにいろいろなところでしゃべったり書いたりしたことなので、ここでは裏話的に。 ことの発端は、1995年にJR東日の非接触自動改札機(まだSuicaという名前はなかった)の開発担当者が、私のところに相談に来た所から始まります。ICカードを使う改札機については、すでに10年以上研究されており、技術的にはほぼ現在と同じレベルに近付きつつありました。 しかし、実際に試作してテストしてみると、ちゃんと通れない人が半数近くに登りました。特に実験に参加した重役達の評判は悪く、「私のは5回に一回しか通してくれない。2割バッターだ」などと、開発部長が会議の席で罵倒される場面もあったりして、開発中止直前に追い込まれていたそうです。 原因はある程度分かっていました。お財布ケータイやセキュリティカードに慣れた現代の皆さんなら、カードを当てる場所はすぐに

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » ドリームチームが作ったMUJIアプリ”NOTEBOOK”

    MUJIブランドから、iPad向けのアプリNOTEBOOKが発売になりました。無印良品のソフトウェア、しかもApple向けというだけでも十分ニュースなのですが、私にとってはさらにうれしい事件でした。この開発チームが知った顔ばかりなのです。 開発主体となった、Takram Design Engineering の創設者、田川欣哉@_tagawa君は、学生の頃から私のオフィスで働いれくれた元スタッフです。特に2001年以降の数年間は、私のオフィス兼自宅に住み込んで文字通り24時間片腕となってくれました。 その彼が、サン・マイクロシステムズからGoogleを経てtakramにやって来た川原英也@hideyaさんとともに、このプロジェクトのために集めた面々は、以下の通り。 CyclopsやTagtypeキーボードを私と一緒に製作したソフトウェアエンジニア間淳@2SC1815J 君 。On th

    mathatelle
    mathatelle 2010/11/18
    愛がある
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 奇人天才シリーズその6:吉岡徳仁さん

    吉岡徳仁さんとの出会いは、2001年の日科学未来館のオープニングイベント、「ロボット・ミーム」展の会場構成を依頼したことでした。 きっかけはその前年のISSEY MIYAKE Making Things展でした。30代前半だった吉岡さんの展示には、手垢にまみれた「スタイリッシュ」への断固たる決別があり、それに深く感銘を受けたのを憶えています。 「ロボット・ミーム」展は、ロボットと人々の新しい交わりを提示する事を目的とした、藤幡正樹氏と松井龍哉氏と私の3人展でした。私は二人を説得し、吉岡氏の事務所に直接電話で会場デザインを依頼しました。 電話から二月後に彼が提示したアイデアは、マネキン人形を型にして人型レリーフのポリカーボネートパネル700枚を使って、会場に巨大な迷路を作るというものでした。 吉岡さんはとてもシャイな人で、多くを語りません。提案の時も、スタッフの女性が説明し、ご人はただ穏

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 繰り返される分かれ、あるいは出会い

    オフィスの窓の前には直径80センチぐらいの、都内では大木と言える樹があります。雨が降ると、水が上から枝分かれを逆にたどって集まってきて、根元近くは小さな滝のようになります。樹の構造は雨水を効率よく根元に集めるための水の路でもあるらしいのです。そういえば川と樹の形はどことなく似ています。 地面に雨が一様に降ると、水流は無数に様々な向きに発生し、それらが偶然に出会って流れになり少しずつ大きくなります。流れは地面をえぐりながら成長しさらに周辺の流れを引き寄せます。そこで起こることはひたすらに出会いの繰り返し。川の流れの形は、小さい出会いから大きい出会いへ、無数の出会いの繰り返しから生まれる形です。 一方、樹は、シンプルな双葉からスタートし、そこから徐々に枝分かれして枝を増やします。最初の方に分かれた枝はそのまま大きくなり、分かれた先それぞれでさらに分かれ、分かれるたびに小さな枝分かれとなって、小

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 描線は、これから生まれるものの「舞」である

    描線は、絵の上の形を表す輪郭であると同時に身体の運動でもあります。水墨画の達人の筆運びはまるで舞のようですし、絵画では「何を描くか」から解き放たれた純粋なストロークが、芸術として一分野を形成しています。 実際、手描きのスケッチを多用していると、時として頭の中にもなかったことが、手の運動の結果として、画面上に現れます。私のスケッチは、あくまでもなにかを構想するための手段なので、多くの場合はこうした線にはさほど意味がありません。 しかし、あることに気をつければ、手の運動の軌跡が、紙の上で意味のある形をなし、アイデアの創出につながります。それは、描こうとする対象の構造やふるまいを、自分の身体感覚として認識することです。 そのために私は、ものが使用されている時の動きを観察し、スケッチし、自分でもやってみます。自分が手にした時の重量感や、操作した時の抵抗や滑らかさ、堅さや強さの感触なども重要です。時

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 手元を見て学んでもらうしかないとき

    大学の教員である前にデザイナーである私は、学生達と進める研究プロジェクトにおいても、私自身が対象物をデザインしてしまうことが少なくありません。 走行用義足のプロジェクトの中でも、膝継手(上の写真)の開発においては、私自身がスケッチを描き、CADデータも作成しました。 調査活動や議論の段階では学生達に積極的に参加してもらいましたし、義肢装具士や切断者達との折衝も学生達が中心になって行ってきました。メーカーとの会議にも学生達は参加していて、彼らのアイデアが実用化につながった部品もあります。 教育としては、学生達に自由にデザインさせながら、助言し、見守り、彼らなりの成長を促す事が好ましいでしょう。実際、私のワークショップ形式の授業では、そのような形で進めるのが普通です。 しかし膝継手の設計は、学生には難易度が高すぎました。バイオメカニクスの先端にあり、高度な製造技術による精密機械でもあり、その上

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 奇人天才シリーズその5:佐藤雅彦さん

    佐藤雅彦研究室は、慶應義塾大学SFCでは一つの伝説になっています。大変な人気研究室で、所属を希望する学生は百人を超え、毎学期大教室で選抜試験が行われたそうです。試験科目には数学も含まれていて、佐藤研究室に入ることの方がSFCに入る事よりも遥かに難しいと言われていました。 佐藤さんと学生達が生み出した様々な傑作はここで紹介するまでもないと思います。「動け演算」、「ピタゴラスイッチ」、「日のスイッチ」、「任意の点P」、「フレーミー」、「差分」…。一昼夜かけてピタゴラスイッチを作る合宿などもあったそうです。間とリズムが印象的な傑作CMをたくさん世に送り出した佐藤さんですが、研究室では日常感覚を数学的抽象で研ぎ澄まし、心にひびくアニメーションや絵を作りました。 授業も大盛況で、300人が入る教室はいつも満席。佐藤さんが右手にケガをして左手で黒板に文字を書いていたとき、文章の途中で黒板の端まで来

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » よく知っている物ほど難しい ~ 絵についてのつぶやきまとめ

    絵についての私のつぶやきを少しまとめておきます。発端は5月17日の暦さんのつぶやきに対する答えでした。長文の連作つぶやきとなり、多くの方にRetweetいただきました。 — 絵を描くというのは、見る技術です。東大工学部でスケッチを教えるようになってもう20年近くになりますが、最初に教える事は目の前に見えている物の空間構造を捉え直すことから始めます。 Rt @rkmt 絵がうまい人は同じものを見ていてもちがうものが見えているような気がする。12:19 AM May 17th webから 面白い事に、言語論理的思考の優秀な人間ほどしばしば、「かたち」を見ていない事に気がつきました。「なるほど、わかった」と判断したとたんに、そのものを見なくなるのです。これは人の認知の構造と関わると思われます。12:22 AM May 17th webから 絵を描く訓練は、わかっている物をあえて捉え直す作業です

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 飛行機の墓場

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 科学的思考と (o_o)

    科学的思考というと、正確で事実に即した考え方という印象を多くの人が受けると思います。でもそれは科学的態度の質ではないと私は考えています。むしろ科学的思考の根幹は、事実をありのままには見ないことにあるのではないでしょうか。 (o_o)のような絵文字を多くの人が顔だと認識しますが、考えてみるとこんな顔の人は世の中には一人もいません。物の目はただの丸ではないし、口も一の線ではない。いろいろなところに毛が生えていたり、凹凸が会ったり。私たちの脳は、そうした顔のディティールを省略して、顔の典型をシンプルな形で憶えているようです。実は科学的思考もこの絵文字と同じように、世界を単純化して理解する方法の延長線上にあります。 例えば、力学の基に、慣性の法則というのがあります。「力が加わらなければ物体はどこまでもまっすぐに進み続ける」というものです。しかし見回してみると、そんな物体は私たちの身の回りに

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 来場、ありがとうございました

    「[proto-] 感じるペーパーショウ」には、連日、たくさんの方に来場頂きました。ありがとうございました。 最終日の閉演30分前に、「水より生まれ、水に帰る」の網のベルトコンベアのつなぎ目に亀裂が入りました。ホッチキスで応急措置をしてどうにか最後まで持たせましたが、危うく断裂するところでした。完成したのも開催直前でしたが、耐久性もギリギリだったようです。 「風をはらんで、命を宿す」では、ダイソン社の羽根のない扇風機は全く問題なく働いてくれましたが、空中に浮かぶ紙のくらげ達(私たちは、スカイフィッシュと呼んでいます)は、かなり損耗しました。学生達がひとつひとつお椀型に漉いたスカイフィッシュは、風に煽られ続けるうちに繊維が抜けて薄くなり、だんだん形が保てなくなるのです。会期中も作り続けて、用意した数十枚が最後は底をつきました。 このように、最短のスケジュールで進行し、予定期間以上の耐久性を持

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 深澤さんの台形

    “スティーブ・ジョブスの台形嫌い“については、たくさんの反響をいただきました。製造コストのために、垂直に作りたくても少しだけ台形にせざるを得ない状況は、多くのメーカーの技術者やデザイナーが日頃経験している事だと思います。 深澤直人さんが2006年にneonを発表したときに「垂直に立てて置くことができる」ことや「積み木のように複数個を自由に積み重ねることもできる」ことがさまざまなメディアを通じて強調されていました。 もうおわかりと思いますが、これも完璧なゼロドラフト(抜き勾配なし)を象徴したエピソードです。当時、「携帯電話を積み上げられることに何の意味があるの?。neonを複数持つ人なんていないし」と首を傾げる友人に、これは実用性を訴えているのではなく、スタイルへのこだわりを伝えているんだと思うよと説明した覚えがあります。一見ただの直方体に見える携帯電話の多くは、実際にやってみるとちゃんとは

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 亀の井別荘のスーパーノーマル

    湯布院に亀の井別荘という旅館があります。今更私がここで何かをいうのもむなしいほど、いろいろな雑誌やブログで絶賛されています。それでもちょっと書きたくなりました。 一言でいうとデザイナー泣かせの旅館です。いわゆる「良くデザインされている」と言えそうなところが見当たらないのです。調度品にも特別な感じはなく、庭の造りも一見無造作。にもかかわらず、空間自体に圧倒的な居心地の良さがある。これはなんか不思議だなと歩き回っているうちに、二つのことに気がつきました。 まず、不愉快な色がどこにもないのです。決してミニマルな空間ではなく、必要なものはなんでも揃っているのですが、調和を壊すような質感や色彩が丁寧に除かれている感じ。 もうひとつは、恐ろしいほどに掃除とメンテナンスが行き届いていること。廊下の明かり取りの桟にすら、ほこりが積もっていないのです。信じがたくて、嫁チェックする姑みたいに、指でいろいろな隅

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 曲面を作る

    ふっくら、ぽってり、ゆったり、粘り着くような、流れるような、張りのある、しっとりとした…。こうした表現からどんな曲面を思い浮かべますか。 曲面が持つニュアンスには、それを作る素材の物性が色濃く現れます。その由来をはっきり意識する事は、立体物を作るデザイナーにとって、とても重要なことです。 固いものが研磨されてできる曲面、液体が表面張力で作る曲面、伸縮性のある膜を引っ張ったときの曲面、内部の圧力で膨らんだ曲面、成長によって形成された曲面。それぞれに全く性質が違うので、むやみに混在させる事は御法度。デザイナーは意識して使い分けます。 私が慶應義塾大学SFCで受け持っている演習授業では、「河原の小石」という課題を出題しています。 「木片を削って、河原に落ちている石ころに見えるオブジェを作りなさい。」 課題の目的のひとつは、頭でっかちになりがちな学生達に、自分の手でとことん立体とつき合う経験をさせ

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » そのサイドスローを忘れない

    2000年頃のユニクロのCMだったと思います。 ジーンズをはいた細身の人が、大きな川の前に背中を見せて立っていて、ゆっくりと振りかぶりサイドスローで小石を投げます。その人の手から放たれた少し平べったい小石は、すばらしく遠くまで水平に飛んで、それから何度も水の上ではね、最後はつつっと波紋を重ねて水の中に消えていきます。すべてがスローモーション、日の光が印象的なCMでした。 その人は終止後ろ向きで、顔は見えませんでしたが、そのサイドスローをどこかで見たことがあると思いました。左足を大きく右の方に踏み込んで、鞭のように長くのびた右腕の先から、クロスするように飛んでいく高速の物体。その後、左に巻き込まれていく右腕を追って、流れるように回転する腰と右足。 大学生の頃、私はよく後楽園球場に足を運びました。野球が大好きだったからでもあるし、その頃に描いていた漫画のための取材でもありました。特に、ある投手