「カーン、カン、カン・・・ゴォー」。薄暗い作業場、ふいごで風を送るたびに起こる火焔が刀匠の顔を明るく照らしている。原子力発電用部材の製造で世界トップシェアを誇る日本製鋼所室蘭製作所の巨大な工場の一角に、タイムスリップしたかと思わせる古式ゆかしいたたずまいの瑞泉(ずいせん)鍛刀所がある。同所を代々守る堀井家の分家二代目刀匠の堀井胤匡(たねただ)さんが、鋼を熱しては小槌で叩き、刀の形を整えていく「素延べ」作業に神経を集中させている。(佐藤 道子) 「素延べ」作業に神経を集中する堀井さん瑞泉鍛刀所は1918(大正7)年に設立、90年の歴史を持つ。 明治維新以降、日本刀の技術が衰退、全国の鍛冶場が閉鎖されていたため、宮内庁の仲介によって刀匠の擁護を要請してきたという。他の大手企業からは賛同を得られなかったようだが、鋼づくりの原点は日本刀の鍛錬技術であると考えた製作所は、技術の保存と向上のため引き受