母は私を連れて何度か家出をした。 遠いセピア色の思い出。 決行は夜明けと共に。 毎晩家に帰らず酒を飲み歩くような父だったので当然けんかも多かった。 でも「父が帰らない夜」というのは我が家にとって普通の日常だった。 普段は父不在のほうが、何の問題もなく時間が流れた。 それでも母にも我慢の限界が来るのだろう。 幼い頃の私を連れて何回か家出をした。 家出はいつも夜明けとともに決行された。 車の免許を持たない母の家出。 暗いうちに家を出て、始発に乗り込むことからスタートした。 その日ばかりは父が突然帰ってこないことを願いながら、 予定決行の為、まんじりともせず朝を迎えたのだろう。 何も知らない私はよそ行きの服を着て麦わら帽子をかぶりリュックを背負った。 まだ薄暗い早朝に歩く親子は、はたから見ると楽しそうにも見えたはずだ。 事実、私は信じられないくらい心躍り楽しかった。 始発の汽車。 当時担ぎ屋と呼
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