「旭君が死んじゃうのはあまりに不公平だ」 2016年5月20日。16歳の加藤旭は脳腫瘍との闘病の末、帰らぬ人となった。 旭が逝ったことを知った作曲家の池辺晋一郎は、自分の体験と重ね合わせ、不公平だなと思った。彼は幼いころ、体が弱かった。母は医師から、「お子さんは20歳まで(生きるの)は無理です」と言われている。池辺はそうした母と医師の会話を偶然聞いてしまった。 20歳まで生きられないのなら、やりたいことは何でもやろうと池辺は思った。本を読み、芝居、映画を見て、合唱やオーケストラに参加した。 医師の見立てが悪かったのか、医療技術が上がったのか、池辺は「約束の20年」よりも半世紀以上、長く生きている。 「幸運にも、医師の言葉通りにならなかった。でも、世の中には旭君のように、元気で生きていくと思われていた子が、あんなことになってしまうことがある。僕がこんな歳まで生きているのに、旭君が死んじゃうの