古浄瑠璃の時代から筆を起こし,竹本義太夫,近松門左衛門,植村文楽軒らの人と業績,人形遣いの技法,三味線音楽の展開を紹介する.明治に活躍した竹本摂津大掾,豊沢団平らの芸を語り,松竹の経営,文楽協会の発足,国立劇場の設立から現在まで,大阪に根ざした伝統芸能としての文楽の歴史を描く.岩波現代文庫オリジナル版 ■編集部からのメッセージ 2012年春から夏にかけての橋下徹大阪市長の文楽への補助金カットをめぐる発言は、文楽関係者や愛好家だけでなく、各方面に波紋を及ぼしました。この過程で明らかになったのは、「演出を変えたらどうか」「文楽振興の戦略がない」、はたまた「人形を遣う人間の顔が邪魔」などの意見に象徴されるように、市長の文楽に対する知識の欠如、無理解、そして大阪生まれの芸能に対する愛情の欠如でした。赤川次郎さんが批判しているように伝統芸能とは奥深い山のようなもので、二、三度見ただけでいい、悪いと言