ことばをめぐるひとりごと その18 諸刃のやいば 「馬から落馬する」というような言い方を、「重言」といいます。「馬」を1回使えばすむところを2回使うのが表現としては重複するんですね。似たような例に、「後で後悔する」とか「犯罪を犯す」とか「被害を被る(受ける)」とか、いろいろあります。 「射程距離」というのも、『朝日新聞の用語の手引き』などによれば重言なのだそうで、「程」というのが「距離」の意味を表すのだとか。僕はそれを知って、他人が「射程距離」と言うたびに、「『射程』でいいんだよ」と訂正していた時期がありましたが、最近はやめました。 というのも、重言は、聞き慣れないことばの理解を助ける面もあるからです。「シャテイ」だけでは一瞬何のことだか分からないけれど、「距離」をつけることで理解がスムーズになります。「あるいはまた」「二度と再び」などというのも似たことばを重ねていますが、こうなると誤りと