・小説 天気の子(角川文庫) 映画版の感想はこちら。 受付で来訪理由を伝えると、「こちらに住所と氏名を書いてください」と訪問者名簿を渡された。見ると、すぐ上に「佐倉カナ」という名前が書いてある。あいつめーと私は思う。人の苗字を勝手につかっちゃって。私は仕返しに「花澤アヤネ」と書き、住所もでたらめに記入した。 (中略) 「カナ、こちらアヤネさん。アヤネ、こちらカナちゃん」 知ってる。私たちはバス停で、何度かニアミスをしたことがある。ふわりとしたロングヘアの花澤カナは、私より一つ下の小学四年生。いまいましいことに凪君の今カノだ。しかしここは年上の余裕を見せなければと、「よろしくね」と私はにこやかにふるまう。こちらこそ、とカナがしおらしく頭を下げる。 (中略) 「補導されたなんて、驚いて心臓が止まるかと思った!」と私が言うと、 「ほんとほんと!私の心臓、今もすっごくドキドキしてるもん。凪くん、ち