京、大坂の化粧は濃く、江戸の化粧は薄いと 一般的に思われがちだが、 一概にそうとも言いがたいところがある。 江戸の生活、風俗、文化を知るのに、 喜田川守貞が克明に書きのこした『守貞漫稿』は、 最も一般的なテキスト。 これによれば、 口紅は当初は紅を濃くして、玉虫のごとくに光るのを良しとしていたが、 これでは紅が多く必要なので、 下に墨を塗り、その上に紅を塗ればしんちゅう色に光る、 てなことが書いてある。 あちきは、笹色紅でありんす。 あたしだって、笹色紅さね。 これは『都風俗化粧伝(みやこふうぞくけわいでん)』 という京で出された本には、 「濃く見え紅の色、青みて光る」 とあり、この塗り方を 「笹色紅」または「笹紅」と呼んだ。 くちびるが緑色に光る! しかも下くちびるだけ! 想像してみよう、かなり不気味。 誠に不思議なものがはやる。 ヤマンバはそのひゃくばいは不思議だけど。 当時の口紅は紅