1967年に『夜空に星のあるように』で長編映画デビューを果たして以来、階級や移民問題に切り込み、社会的弱者に愛を持って光を当て続けてきたイギリスの社会派映画監督、ケン・ローチ。脚本を手がけたものも含めると、これまで30本以上の作品を作り続けてきたにも関わらず、賞を取っていない作品の方が少ないというから驚きである。 ローチの作品といえば、カンヌ国際映画祭における最高賞パルムドールを受賞して世界中で賞賛を受けた『わたしは、ダニエル・ブレイク』(2016)が記憶に新しいが、同作の制作後に引退を宣言した彼が自身の発言を撤回してまでも作りたかった映画がある。それが2019年12月13日(金)に日本での公開を控える『家族を想うとき』である。 舞台はイギリスの北東部、タイン川河口近くに位置する工業都市ニューカッスル。この街で暮らす父リッキー、母アビー、長男セブと妹のライザ・ジェーンのターナー家は10年前