ことしの3月、3年半付き合った恋人に振られた僕は失意のどん底にいた。気晴らしに出かけようにも新型コロナウイルスの驚異は日常のすぐそばにまで迫っている。ひま潰しに映画を見ても彼女との思い出がフラッシュバックした。安倍首相がマスク姿でまぬけな会見をしているさまを見ても湧き上がるのは怒りではなく「この男も生涯愛する女性と結ばれているのだなあ」という嘆きだった。どうしようもない。僕の脳内のシナプスは見たものすべてを〈振られた〉という事実に結びつけるプログラムに書き換えられてしまっていた。 失恋と自粛生活のダブルパンチでKO寸前の僕がすがったのはアイドルだった。坂道グループの末っ子、日向坂46にハマったのである。日向の名前そのままに、くすんだ引きこもり生活を送る僕にとって彼女たちはホンモノの太陽だった。あれよあれよという間に沼にはまり、いまではすっかり日向坂46のファンになっている。まさに「こんなに