プロローグ 「鳥取どう? 空気きれい? ねぇ、山とか自然は?」 「あぁ、うん……。それどころじゃなくて、とりあえず駅前のビジホにいて、いま休んでる」 「そっか。だよね……。あのー、さっきの話だけどさ」 「何?」 「わっ、声低っ。あのほら、鳥取の城壁を作るときに人柱を埋めたっていう言い伝えの話。気になって検索したら、すぐ近くの別の場所にも別の人柱の言い伝えがあってさ。鳥取、人柱多いねー。〝猿土手橋〟って知ってる?」 「あぁ、中学んとき、自転車通学で毎日渡ってた、ちっさい古い石橋だけど」 「なんでも、江戸時代、土手を作っては梅雨時に流され、田んぼが被害にあって大変だったんだって。そこである年、村人が新しい土手に人柱を埋めようと決めた。でも誰を埋めるかの話し合いがまとまらず、『明日の朝一番に通った人を埋めよう』ということになった。で、夜明けから隠れて待ってたら、たまたま猿回しの旅芸人が通りかかっ
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