人はいつか死ぬ。「読書は面白い」と同じくらい当たり前の事実ではあるが、この言葉にはなかなかの深みがある。人は生を受けてから、一度も戻ることなく、1分1秒を積み重ねる。そして死ぬのだ。それは50年後かもしれないし、明日かもしれないし、こうしてキーボードをたたいている次の瞬間かもしれない。 この「いつか」というのがポイントである。明日も生きているだろうと思うから、つかの間の楽しみである冷凍庫のアイスを今食べないし、大切な人への感謝の気持ちも先延ばしにしてしまう。そして、貯金はこの最たるものだ。もし明日死ぬとわかっていれば、お金を貯めるなんてもってのほかである。いくら金持ちでも、死後の世界にお金を持ってはいけない。 これが本書のテーマだ。キーメッセージは「ゼロで死ぬ」。人生において大切なのは富の最大化ではなく、経験の最大化だと著者はいう。喜びを先延ばしにするのではなく、今しかできないことにお金を