ニホンオオカミは絶滅している。 一応、これが一般的な知識です。ニホンオオカミの最後の確かな生存確認は1905年。いまでも標本が残っています。その後1910年に撲殺されたイヌ科の動物がニホンオオカミだったと言われていますが、標本が消失し、学術的には未確認とされています。 環境省では「過去50年間生存の確認がなされない場合、その種は絶滅した」と判断するため、この基準に則り、ニホンオオカミは絶滅している、といわれているわけです。 でも、本当に絶滅しているのでしょうか? 人里離れた山奥に、わずかな数だけで生き残っている可能性はないのでしょうか? いないことは証明できない。だからいるかもしれない。 この仮定の上に立っている物語が、今日ご紹介する熊谷達也氏の小説『漂泊の牙』です。 あらすじ ネタバレはしたくないので、大雑把なあらすじだけご紹介します。 舞台は東北の山奥。ある老人が「オオカミが出た」と発