『ローズ』(THE ROSE/1979) その圧倒的な演技力と歌唱力で、観る者の心を完全に魅了してしまう女性エンターテイナーが稀に存在する。映画ファンや音楽ファンなら、まずはバーブラ・ストライサンド、ライザ・ミネリ、そしてベット・ミドラーの名を挙げておかなければならない。バーブラの『スター誕生』やライザの『ニューヨーク・ニューヨーク』も素晴らしかったが、何と言っても『ローズ』(THE ROSE/1979)には心打たれた。 スーパースター歌手の愛と激情と孤独な魂を描いたこの作品は、よくジャニス・ジョプリンの伝記映画と思われているがそうではない。主人公のモデルの一人になっていることは確かだが、1960年代後半という激動のロック時代を築いた複数のアーティストのスピリットが全編に漂っている。 ベット・ミドラーはこれが初めての主演映画で、いきなりアカデミー主演女優賞にノミネートされた。ハワイ生まれの