春が近いとはいえ、まだ寒さが厳しい季節には、帰り道の赤ちょうちんが魅力的に見える。今回取り上げるのは、居酒屋や酒をテーマにした本の数々。楽しく、美しい文章に酔いしれたい。(川村律文) 「煮込みは一つの着地点であって、メインは、煮込みが食べられる居酒屋のある町や横丁周辺をブラつくこと」 こう書くのは、坂崎重盛『東京煮込み横丁評判記』(光文社)。街歩きを愛する著者が、煮込みをテーマに東京の街を歩いた一冊だ。浅草、赤羽、立石……。飲み屋を巡る散歩道を「ルート253(にこみ)」と呼び、魅力的な街の景色をさりげなく織り込む筆致が奥ゆかしい。坂崎さんは、「おいしい煮込みを食べさせてくれる居酒屋がある場所は、古くていい街が多い。散歩の途中に入れる気楽さもいい」と語る。 一方、酒場を巡る楽しさを書いているのは、大竹聡『もう一杯!!』(産業編集センター)。人気雑誌「酒とつまみ」編集長が、自らの酒について書い