本日の朝日新聞夕刊に予告されたように、 森見登美彦氏の新作が6月9日の夕刊より掲載される。 タイトルは『聖なる怠け者の冒険』である。 そして登美彦氏が作者の言葉で語ったように、 作者とともに読者もハラハラされるがよい。 「人生も連載も、一寸先は闇」 と登美彦氏は言っている。
森見登美彦氏がはてな氏のインタビューにこたえている。 http://ugomemo.hatena.ne.jp/special/guestbook_11 とはいうものの。 登美彦氏はここしばらく、まったく日誌を更新しないというお馴染みの遊びに夢中になっていた。 微動だにしない自分のブログのかたわらで、こんな風にえらそうにはてな氏に語ったりすることができるというのは、つまり登美彦氏の面の皮が意外にぶ厚いということのあかしでしかない。 ともかく、登美彦氏は「はてな道」を極めたとは、とうてい言い難い。 極めようともしていない。 億劫だからである。 「ブログを開設しているからといって更新しなければいけないと誰が決めた?」 登美彦氏は何か大したことでも言ったかのような顔をする。 ここしばらくいろいろなことがあった。 登美彦氏はサイン会に出かけて多くの読者の方々と交流したり、『夜は短し歩けよ乙女』の舞台
竹林はざわざわと揺れ続けている。 締切次郎は、登美彦氏のズボンの裾を引っ張っている。 「お願いします!『太郎』は、マジでやばい」 「ええい、かまわぬ。知ったことか!」 「太郎が来たら、それこそ何もかも、容赦なく締め切られてしまうのですよ。僕なんざあ、かなわねえ」 「じょうとうだ。太郎を呼び出して、おまえを蹴散らしてやる」 「分かんない人ですね!」 竹を切る腕におぼえあり。 登美彦氏はギコギコやりだした。 竹から発する橙色の光の中で、細かい切り屑がふわふわと舞った。 半ばまで切ったところで、どこからか「人生の柱時計」が時を告げる音が聞こえた。 ぼーんぼーんぼーんぼーん… えんえんと響いて鳴りやまず、ついに三十回を数えた。 「おや!」 登美彦氏は手を止めた。 「どうやら俺は三十路に入ったらしいぞ」 「これであなたも青春を失った」 「なんのこれしき、まだまだ!」 登美彦氏はさらにノコギリを動かす
猥褻なまでに潤んだ瞳でおのれを見上げる締切次郎を見つめ、 森見登美彦氏は負けじと瞳を潤ませた。 「仕事、始めない!」 登美彦氏は叫んだ。 「いやいや、仕事始めなんですよ」 締切次郎は猫なで声をだす。「そろそろ始めないと、あれもこれも…」 「黙れ、次郎」 登美彦氏は精一杯恐ろしい顔をした。「太郎に言いつけるぞ!」 「あ!」 締切次郎はぷるぷるの頬をこわばらせた。 竹の切り株に抱きつくようにして「いやいや」をした。 潤んだ瞳がますます潤む。 「それは言わない約束なのに!」 「そんな約束をいつしたか、何時何分何曜日!?」 「そんな森見さんってば、しどい。小学生じゃないんだから」 「うるさい!」 登美彦氏は薄暗い竹林を走り出す。 すかさず締切次郎は登美彦氏の右脚に飛びついた。「逃げたってムダ!」「あとで自分が泣く癖に!」と不愉快きわまる正論を叫びながら、締切次郎は全体重をかけて登美彦氏の逃亡を阻止
森見登美彦氏は竹林をさまよっている。 竹林をさまよいながら、 「今年もたいへんな一年になるだろう」 と考えている。 いささか賢人チックに見えないこともない。 すべて計算である。 登美彦氏は経済にくわしいとは言えない。 それでも世の中が暗い感じになっていることは分かる。 「世界的に不景気なのだ」とマジメな顔で嘆くこともできる。 「りーまん兄弟」という二人組の名前さえ知っているのである。 でも知っていたからとて、何になるだろう。 登美彦氏は竹林をさまよいながら、 二○○九年があんまりたいへんな年にならないことを祈る。 「なむなむ」と。 あんまりたいへんな一年になると、 登美彦氏の息子たちが売れなくなるかもしれない。 なにしろ、登美彦氏の息子たちは、 「なんとなくオモチロイ」以外には何の御利益もない。 ときにはオモチロクない場合さえある始末だ。 言うまでもなく腹の足しにはならない。 ならば心の足
登美彦氏は正月を愛娘と一緒にぐうたらして過ごした。 「お父様、明けましておめでとうございます。ぺこり」 「うむ、おめでとう。しかし、おまえ、ずいぶん小さくなったのう」 「あい。こんなにも小粒に。まるでひよこ豆といっても過言ではないのです」 「そんなに小さくはないだろう。豆に書いた小説は読めない」 「あいすいません。過言でございました。ぺこり」 「『ぺこり』は擬音であって、発音する必要はないのだ」 「あい」 「そんなに小さくなったのなら、どこにでももぐりこめるな!」 「むろんです。日本全国津々浦々へずんずんと!」 「その心意気やよし!ともあれ、表紙を描いてくださった中村さんに感謝だ」 「ぺこり」 「そして『解説にかえて』を描いてくださった羽海野チカさんにも感謝だ」 「ぺこり」 「羽海野さんには唐突にお願いしてしまって、申し訳なかったなあ」 「お父様はなんでも急なのですから。思い立ったが吉日な
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