ドイツ代表GKのロベルト・エンケ選手の自殺は、ドイツ全土に大きな衝撃を与えました。私もショックを受けた1人だったのですが、そんな折、新聞に掲載された演出家ハンス・ノイエンフェルスのインタビュー記事が目に留まりました。 「人生はショーではない。演劇もまたそうで、人間という存在の孤独さを表現することにかかっている。我々は人生での失敗や無能、ばかばかしさを認めてやらなければならない。それは、ロベルト・エンケの生と死にも関わるものだ」。 このインタビューを読んで、彼が演出する現代オペラ『リア王』を観てみたくなり、11月22日のプレミアに足を運んで来ました。 1978年に初演されたアリベルト・ライマン作曲の『リア王』は、シェークスピアの原作をかなり忠実にオペラ化した、今も歌劇場のレパートリーに残っている数少ない現代オペラの1つです。幕が開くと、極めてシンプルな舞台が現れ、椅子に並んで座った登場人物が