隔離された場所で人はどう生きる? ―国という概念が消滅した世界で、子供たちはクローン技術を用いて作られ、女たちは何十人もの子供を育てる。そんな近未来が舞台の「形見」から始まる本書は、独立した短編集のようですが、読み進めるうち、滅亡に瀕した人類が、いくつかの集団に分かれて再起を目指す大きな物語であることがわかってきます。 大学で生物学を学んだので、進化について書かれた本を見つけるとつい手を伸ばしてしまいます。そのなかで、現代はグローバル化が進んで人々の交流も盛んなので遺伝子の多様性が生まれにくくなっている、進化が起きるためには個々の集団がもっと隔離されていなければならないという仮説を読みました。 それがこの物語が生まれたきっかけです。実際に隔離したら、人々はどうなるだろうと。各編でそれぞれの集団を書いているうちに、少しずつ物語が繋がっていきました。 ほかにも生物学の視点は、本書のところどころ