宇治松千夜は、運動が苦手だ。 運動音痴、とも言い換えられる。 バレーボールのトスさえ満足に出来ず、三半規管の貧弱さも人並み外れている。 強いて得意と呼べる競技があるとすれば、せいぜいドッジボール。 それも、生まれ持った危険回避能力を活かし、自分に向け投げられた球をほぼ無意識で回避できるからだ。 別に縦横無尽に動き回り、獅子奮迅の活躍をしてチームを勝利へ導くわけではない。 そんな虚弱な彼女が、自分のペースも考えないで走り回ればどうなるか。 答えは火を見るより明らかだ。 目的を果たすよりも先に体の限界が来て、結果、歩いて移動した場合よりもペースを落とすことになる。 現に千夜は今、電柱に片腕を突いて喘鳴にも似た痛々しい呼吸をあげ、その歩みを完全に止めてしまっていた。 足が棒になったといっては大袈裟だが、千夜にしてみればそれだけの疲労感だった。 ――人間いざとなれば火事場の馬鹿力が働いて、本来の力
あれから。 麻雀に快勝し気分を良くしたDIOは、尚も他の娯楽で暇を潰そうとして、娯楽場の案内図を見に行こうとした。 しかし、実際に案内図を見て―――――正確にはその横にあるホテルの案内図を見て、より有意義な時間の過ごし方を発見した。 ―――――ホテル内の、綿密な探索。 もしも敵が強襲してきた時、そしてその敵が万が一にでも日光というDIOの弱点を把握し、外に面する場所へ誘導するなどといった姑息な手を使ってきた場合。 こちらも流石にホテルの中を、単に地図で掴んだ概要以上にしっかり把握しておかなければいけない。 吸血鬼としての身体に『世界』という最強のスタンドを持つ自分だが、あのクソッタレの侍共のように、必死に小さい頭を捻って考え付いたなけなしの策が、「偶然」このDIOの域に達することが「万が一にでも」存在するかもしれない。 だが、帝王が完全に地の利を理解しているのであれば、そんなちっぽけな偶然
人の苦しむ姿や足掻く様を見て喜ぶ人種とは、何もフィクションの世界だけに見られる異常者ではない。 他人の不幸は蜜の味という諺がある。 誰かが失敗して滑稽な様を晒せば、それに後ろ指を指して下卑た笑いを浮かべる。 誰かが恥をかけば、鬼の首を取ったように皆でそれを共有して話の種にする。 不幸に遭った人間にしてみれば堪ったものではないが、その人にとっての他人からすれば単なる対岸の火事だ。 不幸を笑い、吹聴して楽しむ。 まさに人間だけが持つ、生来の悪徳というべきだろう。 しかし逆によほどの聖人君子でもない限り、誰でも生まれながらに持ち合わせている性質なのだから、別にそれ自体は責め立てられるようなことでもない。 だがそれを根源的な願望として持つ人間が居るというのなら、その者は間違いなく異常者の類だ。 人の苦しみを観測(み)て悦に浸り、自分の心的欲望を満たすという願いは言うまでもなく歪んでいる。 危険人種
ホル・ホースは喜ばしい気分であった。理由など、改めて語るまでもないだろう。定時放送で呼ばれた二人の忌まわしい名前が、彼を喜ばせていた。 花京院典明、ジャン=ピエール・ポルナレフ。 自分にとって目の上の瘤であるジョースター一行の人間が、二人も脱落してくれたのだ。 承太郎やDIOといった面倒な人間はまだ残っているものの、この分では彼らも案外適当な所で野垂れ死んでくれるかもしれない。 手を組みたいと考えていた範馬刃牙や、悪魔が次善の策に上げた蒼井晶の死は想定外だったが、それでも特に致命的な事項というわけではない。 だが、アインハルトはホル・ホースとは違った。 彼女は人の死を喜ぶような人間では決してないし、それ以前に、彼女にとっては見逃すことのできない名前が一つ読み上げられたのだ。 ――桐間紗路。 ラビットハウスを目指す理由だった少女の一人。喧嘩別れのような形になってしまい、結局謝ることさえ出来な
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