些事(さじ)詠んで確かなワザが伴えばそれでいいんだ短歌と言うは 津波禍の人らの死体一体も見ていない東京住まいのわれは 白い花ほんとに白く 赤い花ほんとに赤い 球根ベゴニア 廃炉まで四十年の原発は四十年の雇用生み出す 信号の〈緑の人〉は自らは歩かず人を歩き出させる デパチカがデパート地階、シブチカは渋谷地下街、シブチカを行く 山笑ふ、と思って見れば取りめぐる山みなホカホカ笑っています ホームランそれも場外ホームランのようなドデカイ歌が詠みたい 〈原発の汚染水制御されてる〉と啖呵切るごと総理は言えり 鉄板の上なる白き骨の嵩、子雀ほどぞ そこまで生きた (奥村晃作 造りの強い傘 青磁社) *********************************** 奥村晃作の第十四歌集、『造りの強い傘』を読む。 まず、装丁がシンプルで力強い。「造りの強い歌集」と呼びたくなる。集題のコンセプトにぴったり