10年ほどまえ、京都の某ホテルのロビーで、わりといいスーツを着た人品いやしからぬ感じのおじさまと、真夏でもないのに下着みたいなワンピースを着た20代前半のきれいな女の子を見かけた。 おじさまは女の子をロビーのソファに座らせ、自分はフロントでチェックインの手つづきをしている。私がなぜ、その2人の動向に注目していたかというと、女の子の顔から表情がごっそり抜け落ちていたからだ。 親子でも親戚でも出張に来た上司と部下でもないよな。2人の関係は、もはや明白だよな。ものすごくもやもやした。よっぽど、「あれ、ミサちゃん(咄嗟の仮名)? やだ、ひさしぶりー」と、女の子の知りあいのふりをして声をかけてみようかと思った。そうすればおじさまが退散するかもしれないし。でも、余計なお世話かなという気がして、実行には移さなかった。 私はそのまま夕飯を食べに出かけ、4時間後ぐらいにホテルまで戻ってきた。すると偶然にも、