1年前に電通の新入社員が自殺した事件について捜査していた厚生労働省は、労働基準法違反の疑いで、電通と当時の上司を書類送検した。家宅捜索してから、わずか1カ月半という異例のスピードだ。この背景には、安倍政権の意向があるといわれる。これを受けて電通の石井直社長は、来月辞任すると表明した。 しかし過労自殺は、それほど珍しい事件ではない。厚労省の統計によれば、2015年度の「精神障害による自殺」は、労災認定されただけで199件。毎年200件前後で、最近増えているわけでもない。電通の事件がこれほど大きくなったのは、舞台が有名企業で、自殺したのが東大卒の美人だったからに過ぎない。役所やマスコミが電通を叩いても、問題は何も解決しない。 失業で「人生をすべて失う」社会 過労自殺でいつも議論になるのは「自殺する勇気があるなら会社を辞めればいいのに」という疑問だ。それはどう考えても不合理だが、日本では会社を辞