友人の新居に行くと新しいソファがあったので、連れだって行ったもうひとりとそろって褒めそやした。えらいねえ、がんばったねえ、いいの買ったねえ。 友人は新卒時代から同じアパートに住んでいて、去年取り壊しになったので越した。学生寮から引っ越しておよそなんにも持っていなかった彼女に、一人暮らしをやめるからとか、新しいのを買うからといって、いろんな人が家具や家電をあげて、アパートに入居したころには、いちおう格好がついていた。私たちはほっと胸をなで下ろした。彼女は仲間内でいちばんお金がない、というか、有り体に言うと学費免除とアルバイトによる学生生活を送っていたので、就職活動とアパート入居費用で財布が空であることは容易に想像がついたからだ。 そのあと十数年のあいだ、彼女の入った小さい会社は一度つぶれかけ、復活し、大きくなり、彼女はその浮き沈みのすべてに対して平気な顔をしていた。いちばん給与が低かったとき