アフリカ東部ウガンダの首都カンパラから車で五時間。北部最大の街グルは、赤土がむき出しで、ほとんどの家に電気、ガス、水道がない。薄暗い部屋に陽光が差し込むと、ビッキー(32)のガラスの義眼が一瞬、光った。「政府軍の銃弾が首から入り右目を貫通した。二発目はあごに残った」。北部民族アチョリ人の反政府組織「神の抵抗軍」(LRA)の兵士として政府軍と戦っていたビッキーは、このケガで「戦力外」となり、二〇〇八年に解放された。 LRAは一九九〇年代半ばから約十年間で推定三万八千人の子どもを拉致し、戦闘員や性奴隷として使った。ビッキーが拉致されたのは十五歳の時。すぐに、四十歳ほどの司令官と結婚させられた。「生きるために従った。下品で慈悲のない男だった。今も、憎い」 約三十人の部隊で密林を絶えず移動、自動小銃を手に政府軍と交戦した。やがて身ごもり、年上の女性兵士に助けられながら、密林の中で男児二人を産んだ。