この季節になると風邪を引く人が多くなり、私らのような科でも風邪薬を要求されることがしばしばある。 一般的に「風邪」と言っても、インフルエンザや、細菌性の肺炎、喘息、更には循環器疾患の初期症状であることもあり、馬鹿には出来ないのだが、この辺の見極めはおのずから「見た感じ」で分かる物で、不思議なことにこの判断はまず外れることはない。 どんな科を専門にしていても、さまざまな症状の向こう側にたなびいている「陰の気」みたいなものを感知する力は付いてくるもので、あまり経験とも関係ないような気もする。勿論、このような不確かなものにすべてを委ねているわけではなく、基本的なチェックを積み重ねるのは当然のことである。しばしば忘れるけど。 それを前提にして、「大したことがない」のが分かりきっている風邪引きの人にどう対応するのかというのは、結構我々を悩ますものだ。私が初めて市中病院で仕事をするようになった頃、職員