●何日か前だけど、深夜にBSで『頭痛 肩こり 樋口一葉』(こまつ座)の舞台録画をやっていたのをなんとなく観ていて、その、ベタの上にもう一つ二つベタを重ねるような、徹底したベタさに軽いショックを受けた。演技もベタベタ、演出もベタベタ、台本もベタベタ。分かり易く記号化された人物、はっきりと聞き取り易い(そして理解に迷うことのない)セリフ、曖昧さのないきっぱりした感情の動き、適度な抑揚はあるものの揺らぐことのない平明なリズム、戸惑うことのあり得ないきれいに図式的な設定と展開。笑いがあり、涙があり、適度な文化的香りと多少の啓蒙的要素がある。観客に一切の疑問を抱かせない親切なつくり。多くの人に「伝える」ためには、ここまで噛んで含めたような徹底した分かり易さが必要なのか。 ここには、ぼくが「作品」というものから感じる魅力的要素のほとんどが(そんなものは青二才のたわごとだと言わんばかりに)きれいに漂白す