ぼけの語用論 日本語における〈ぼけ〉 とは、主に加齢に伴う〈痴呆状態〉ないしは、その重い症状へといたる状況を描写する民俗医学用語である。日本語による〈痴呆〉とは痴呆状態という症状をさし、病名として呼ぶ際には〈痴呆症〉という名称が使われる。その際の〈〜症〉とは、病気ないしは疾患・疾病(disease)をあらわす接尾語である。 生物医学用語としての〈痴呆〉が国民の間に膾炙したのは、1968年の全国福祉協議会による 初の全国的な「居宅寝たきり老人実態調査」が実施され、72年の有吉佐和子のベストセラー小説『恍惚の人』(英訳書名:Sawako ARIYOSHI,"The twilight years," 1984.)が公刊された1960年代後半から70年代初頭のことである。 この時期における〈ぼけ〉の社会問題化は、〈痴呆〉という専門用語が一般的に国民に知られる につれ、俗語ないしは卑語としての〈ぼけ