日本写真史のみならず、昭和という時代にまぎれもない巨歩をしるした土門拳。昭和10年(1935)「報道写真」を掲げる制作集団『日本工房』に参加してから、脳血栓で倒れる昭和54年(1979)まで足かけ15年にわたる土門拳の作家活動は、日中戦争、太平洋戦争、敗戦、戦後復興から高度成長期に至る、空前絶後ともいえる「昭和」の激動期と重なるものでした。その渦中に身を置いた土門は、ドキュメント、人物、古美術、建築、風景と、あらゆる被写体につねに全力でぶつかり、そのいずれの分野においても不朽の名作を生み出したのみならず、強いメッセージを込めた写真論によって、当時のアマチュア写真家たちを大いに鼓舞し、その後の日本写真界に多大な影響を与えました。 土門拳生誕100年を記念して開催される本展『土門拳の昭和』は、精選された約200点を一堂に展示、一人の写真家が自分の生きた時代として撮った「昭和」、鋭い目で選び出し