※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年10月号からの転載です。 京極夏彦とはどのような人物なのだろうか。それは京極ワールドを楽しむ私たちにとって、永遠の謎である――! 京極夏彦さんと共に作品を作り上げた方々、またご親交のある作家の皆さまに、京極さんとの思い出や京極作品の魅力について伺いました。今回は綾辻行人さんです。 初対面・初対談の記憶 京極さんとの初の対面は、記録によれば一九九五年一月二十四日火曜日の逢魔が刻。この文章を書いている現時点(いま)から見て二十八年半ほど前になるが、本当はすでに三百年くらい経っているような気がしないでもない。当時の記憶もすっかり薄れたり混乱していたりして、どうにもダメダメな感じの昨今……なのだけれど、考えてみれば自分ももう齢六十過ぎで、京極さんもこの春に還暦のお祝いがあったそうだし、まあこんなものかと思うことにしよう。 記録によれば、初対面の場所は東京・