9.「何故もっと早く・・・」ダンディーが恨み言を言った 再びレッスンが始められたが、ナッパの生まれつきとも考えられるリズム感の無さから、これ以上の練習は時間の無駄のように思えた。『小中学校の音楽の授業を、彼女は一体どうやって乗り越えて来たのだろう』クマがそんな事を考えていると、アグネス・チャン・ファンクラブ会員に成りたてのカメが、カラオケテープを作り彼女が家に帰ってからも練習出来るようにしたらと、珍しく賢い事を言った。 早速録音に取り掛かろうとしたものの、肝心な空テープが無い。ところが運の悪い事に、クマの一作目のオリジナル作品集「1973.11」のB面が空いたまま、偶々センヌキが持っていたのだ。 「これにしよう。」イタズラ小僧が新たな企てを思い付いた時のように、センヌキは得意げな笑みを浮かべて、そのテープをクマの前に突き出した。 『えっ。』クマは一瞬、顔面蒼白になった。何故ならこのカセット