この頃の私は家の中で息をひそめ、自分の精神や食欲をコントロールする日々を送っていた。近所の誰にも知られないように、一歩も外に出なかった。達也がバラエティ番組を大きな音で見ているのが気に障り、はさみでテレビの電源コードを切り、親に散々怒鳴られた。 矢幡洋・著『病み上がりの夜空に』 【第3回】妻の章―亜空間(その3)---私が、治療者になる?精神の病だらけの人間に、心理療法などできるだろうか | 立ち読み電子図書館 | 現代ビジネス [講談社] ああ、こりゃ、やっぱり暴力だね。 にらみつけた目をそらすまいと思っていたが、つい下を向いてしまった。そのとき、私の左側にちょうどまな板があった。その上に包丁が載っていた。私は左手でそれをつかんだ。 達也は手を離すと、ぱっと後ろに飛んだ。 私と達也の間に、冷たい金属色で鈍く光るものが屹立していた。 「何すんだよっ。危ねえじゃねえか」 矢幡洋・著『病み上が
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