韓国ではつい最近まで高齢者介護は家族が担うものとされてきました。老人福祉法の第3条には「国家と国民は敬老孝親の美風良俗にともなう健全な家族制度が維持・発展するように努力しなければならない」と規定されています。 これは高齢者介護については「先家庭保護、後社会福祉」という基本方針を提示したもので(※1)、儒教思想に基づく考え方だと言えます。儒教思想の影響を受けている点では、日本も韓国も同じですが、韓国ではその影響が現在でも日本より強く残っています。 しかしそのような韓国でも、家族による高齢者介護は様々な限界に直面しています。日本の介護保険法に相当する、老人長期療養保険法案の提案理由で述べられているように、韓国は世界でも例のないスピードで高齢化が進行しています。急激な高齢化により認知症など日常生活が難しい高齢者が増加し、核家族化や女性の社会進出などにより介護が必要な老人を家庭で世話することが難し