和歌山県太地町で行われているイルカ漁の実態を追ったドキュメンタリー映画『ザ・コーヴ』。本年度アカデミー賞やサンダンス映画祭などで数々の賞に輝き、話題を呼んだ作品が日本公開を直前にして、東京都内の劇場や大阪・シネマート心斎橋で急遽上映中止となった(※)。これは、同映画を「反日映画」と捉えた団体による過激な抗議活動を受けての判断だという。その後も上映中止に対し、55人のジャーナリスト・文化人が反対声明を発表するなど、依然として大きな波紋を呼んでいる『ザ・コーヴ』。その内容を客観的かつ冷静に分析してみた。 『ザ・コーヴ』 盗撮に憶測……作り手の誠意はどこに? マイケル・ムーア監督の『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002年)や『華氏911』(2004年)、アル・ゴア元アメリカ合衆国副大統領が主演した『不都合な真実』など、過去に日本でも話題を呼んだドキュメンタリー映画は数多くあった。もちろん